えごま研究の第一人者奥山治美先生に聞く、
なぜ「えごま」がすごいのか
えごまはシソ科植物で、シソと容易に交配する近縁種です。中国・インドが原産地ですが、わが国では縄文遺跡からも出土し、古くから食用とされていたようです。ほとんど消えようとしていたえごまの見直しが始まったのは、種子の半分を占める油に特徴があったからです。
※写真/はシソ科の1年草のえごまの実。α-リノレン酸が多く含まれます。
|脂肪酸の3つの系列
私たちの体内では、脂肪酸の流れに3つの系列があります。飽和脂肪酸→オレイン酸の系列、リノール酸→アラキドン酸→ホルモン様物質のn-6系列、α-リノレン酸→エイコサペンタエン酸(動脈硬化の薬、EPA)→ドコサヘキサエン酸(DHA)のn-3系列です。えごま油(シソ油)はリノール酸(n-6)が少なくてα-リノレン酸(n-3)が多いという特徴があり、このような油は世界に3種類ほどしか知られていません。(図/食用油の脂肪酸組成参照)。
|さまざまな病気を予防する効果があるα-リノレイン酸
さて、長い間、「動物性脂肪とコレステロールの摂取を減らし、リノール酸を増やすと血中コレステロール値が下がり、動脈硬化が予防できる」と考えられてきました。ところがこの考えは完全に間違っていました。このような食事を長く続けるとむしろ心臓病が増え、寿命が短くなるのです。そもそも大部分の人にとって、血中コレステロールの高い人のほうが癌による死亡率は低く長生きだったのです。コレステロールに対する考え方が、今、大きく変わろうとしています。
これに対し、リノール酸の摂りすぎこそが多くの癌やアレルギー症を増やし、動脈硬化をひきおこす元凶でした。シソ油のα-リノレン酸や魚油に多いEPAやDHAは、リノール酸→アラキドン酸→ホルモン様物質の過剰反応を抑えることによって、これらの病気を予防する効果があります。えごま油は多くの動物実験で有効性が示されましたが、アレルギー過敏症や大腸腫瘍の予防に有効であることは、臨床的にも示されつつあります。
油の良さだけでなく、種子はたんぱく質や鉄分も豊富です。このえごまをいろいろな形で食生活に取り入れていくことが健康増進に役立つでしょう。
「家庭画報特選(2006年度春号)体にいい自然食品」より抜粋
|